ロールケーキ作りのひと手間の秘密





卵、

砂糖、

小麦粉、

これさえあればロールケーキの生地は出来上がります。家でせっかく作るなら、全ての作業をいつもより丁寧にすることで美味しさも極まります。ひとつひとつの作業や道具を見直すことで本格的に変えることが出来ます。

①敷紙

ロール紙を使用します。

クッキングペーパーとロール紙は違います。クッキングペーパーはスーパーや100均等で手に入る、シリコン樹脂加工されたツルツルした紙です。これには耐油性があるため、焼き上がり中に膨らんでいる生地が滑り落ちてしまうのです。

ロール紙とは特殊加工されていない薄紙です。よく見ると表裏があり、わずかに光沢のあるツルツルした面を上(生地に触れる面)にして敷き込みます。製菓店に販売されており、安価で手に入ります。

敷紙の四隅に切り込みを入れ天板にきっちり敷き込みます。また敷紙は生地の膨らみを考慮し、天板の高さ(深さ)からはみ出るくらいの大きさにするとよいでしょう。大きさが足りないなら、2枚をずらし重ねるようにしても大丈夫です。

②レシピの分量調整

砂糖を減らしたいかもしれませんがやめておきましょう。甘さだけが特徴ではありません。

砂糖は卵白の泡立ちを安定化させる役割があります。砂糖は水となじみやすく、水分を吸着する‘吸湿性’、さらに吸着した水分を保持する‘保水性’を持ち合わせます。卵を泡立てる時、溶けた砂糖が卵全体に回り、生地中の水分(卵白)について泡立ちを助け、気泡が壊れにくく安定させてくれます(=吸湿性)。また生地中で砂糖と結びついた水分は、焼いたとき水分が蒸発しすぎず保たれるため、しっとりした食感に仕上がるのです(=保水性)。

ちなみに卵白は泡立ちを作り出す‘気泡性’があります。水分88%、残りはタンパク質でほぼ構成されています。このタンパク質は表面張力を弱める働きがあり、撹拌すると徐々に空気を抱き込み泡立ってくるのです。この卵白の‘気泡性’を高める作用を持つのが砂糖で、安定性の良い気泡を作り出せるのです。

卵の泡立ち具合は砂糖の割合で変わってしまうのです。

甘さ控えめにしたい気持ちもわかりますが、泡立てにふんわり感を出し、それを維持できるのは砂糖のおかげなのです。どうしても控えめに拘るならば生クリームに入れる砂糖を減らしましょう。

そして生地の骨格を担っている小麦粉も見逃してはなりません。小麦粉の持つ弾力と粘りは、砂糖など他の材料と合わせることで引き出したり抑制したりします。この作用を利用してふんわり感を生み出す生地の土台を作ります。成分の70%はデンプンで、これは水を加え加熱すると、デンプン粒が急激に水を吸収し膨張し始め粘りある物質に変わります(=糊化)。つまり加熱するとデンプンが生地中の水分を吸収し、生地が膨らんでいくのです。小麦粉の分量が足りないと、膨らみきれず生地を支えれる骨組みが足りないことになり、生地が沈んでしまったりコシのない生地になります。

卵や小麦粉をあえて減らそうとすることはないと思います。しかし作業中こぼしてしまったり、小麦粉をふるう途中撒き散らしてしまったり、計量中材料が少し足りなくても続行したりなど、無意識でレシピの分量とは結果違っていたりします。家庭で作る分量は少ないため、些細な増減は大きく影響します。例えば50㌘必要な材料を45㌘で始めてしまうと、その材料だけ1割減らしたことになります。

本のレシピの分量は、それぞれの材料の役割をきちんと考えられた分量なのです。うまく膨らまない、パサパサしている等、生地作りの失敗は材料の働きを無視したために起こりがちです。

③小麦粉2度ふるい

小麦粉を加え混ぜていく時、一人で要領よく、手早く尚且つ全体にしっかり混ぜ込む必要があります。下準備として小麦粉の粒をバラバラにするように空気を含ませておきます。

特に小麦粉の分量が多い時は、重くて目詰まりを起こしやすいので数回ふるうことをお薦めします。逆に50㌘以下の少ない時は、空中に飛んで減る場合もあるため、ふるってから計量すると良いです。

また生地作りを始める直前でふるいます。時間が経つと、湿気を含む等してダマになりやすくなります。小麦粉は卵液に混ぜているとき下に沈みやすいです。ダマになったまま混ぜ込むと必要以上に力が入り混ぜる回数も多くなってしまい、さらに混ぜきれず焼成後も粉の塊のまま残ることもあります。

ダマは見た感じ分かりません。なかなか混ざらないと感じる時、或いは焼成後の生地に白い塊を見つけた時にふるいの重要さに気付きます。

③温度を測る

湯煎の温度→50~60℃

卵液の温度→夏なら32℃、冬なら35℃

卵黄は泡立ちが弱いため、湯煎にかけ温めることでコシを弱め泡立ちやすくしているのです。但し卵黄は65℃以上で、卵白は58℃以上で固まり始めるため湯煎温度にも注意です。

また卵液の泡立てを完了した時に、室温と同じくらいに温度が下がっていないといけません。温かい卵液のまま小麦粉を加えると、小麦粉のタンパク質が熱で固まり、生地に粘りが出てしまいます。そうするとふんわりした口当たりに仕上がらなくなります。

さらに季節により室温が違うため、暖房中でも寒い冬は夏より室温が低いです。湯煎からはずして泡立て始めた後の卵液の温度の下がり方は冬の方が早くなります。そうすると泡立て時間も少し長くする必要もあります。

室温が低い時、分量が多い時も含め、泡立て時間が少し長くなります。レシピ本にある温度も泡立て時間もあくまで目安になります。だからといって勘で人肌温度を判断すると泡立ちに影響が出てきます。手先が冷え込む冬は、温度が上がりきってない卵液を温かくなったと思い込み泡立て始め、その結果いまいち泡立ちが良くない状況になり後戻りできなくなってしまいます。

適温にしなければ効果が発揮されないということを知る必要があります。

最後に

実際に生地を作る時、そのレシピ本には書かれてなくても適した温度、混ぜ加減、焼き上がり具合など自分で判断しなければならないことの方が多いです。何回も挑戦し、失敗して知ることもやはり必要です。